夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「恋人がいるっていえばいい」
「──まあ、いればそうでしょうけど」

 残念だけど、そんな人はいない。いたらいたで結婚はいつだと迫って来そうだし、厄介な展開しか想像できない。

「俺が彼氏になってやろうか?」
「は?」
「なんなら、名実ともに俺の女になればよくない?」

 接近してきた男から酒と安っぽい香水の匂いが漂ってきた。じっとりと私を見る目は、獲物を値踏みするようで気味が悪い。
 女なら誰でもいいってタイプか。こういうのは無視するに限る。

「お気遣いありがとうございます。でも、結構です」
「そういうなって。お姉さんには負けるけど、君もよく見たら可愛いじゃん」

 めちゃくちゃ失礼なことをいっていると、わからないのか。これだから酔っ払いは困る。

「真奈さん、今日はもう帰るね」

 鞄を手にして席を立とうとした時だった。
 男が私の手首を掴んだ。

「まだ早いじゃん。もう少し飲もうよ」
「ちょっ、離してください!」
「別の店行くのはどう? ワインが美味しいところ知ってるんだ」
「行きません。帰るんで、離してください!」
「奢ってやるからさ」

 全く話が通じず、恐怖すら感じた。
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