夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 百香ちゃんを困らせたいわけじゃない。心配しているだけだというのに、どうして上手く言葉が出てこないんだ。人を助けるために弁護士になったというのに、好きな女の子一人、救えないのか。

 髪をかき乱して「ごめん、違うんだ」といいかけた時だった。

「羨ましいって思っちゃったんです」
「……羨ましい?」
「はい……渉さん、大学卒業の時に私にいいましたよね。先に弁護士になるけど、必ず一緒に、弱い立場の人たちを助けようって」
「ああ、覚えているよ」

 高校受験を終えた百香ちゃんに、俺は 追いかけてくるのを待っていると告げた。
 あの頃、彼女に対して恋心があったかといわれたら、そうだとはいえない。当時、十五歳の少女にそういった感情を抱くというのも、どうなんだという葛藤があったから、片足は突っ込んでいたのだろうが。

 ただ、真面目で頑張り屋な姿を見て、百香ちゃんに負けられないと思っていた。この先も、背中を追っててきてほしいと願っていた。

「どうして諦めたのかな。浪人してでも、しがみ付けばよかったのに……渉さんは、困ってる人たちのために毎日戦ってるんだって思ったら、なんだか、情けなくなって」

 とつとつと語られる声が、次第に震えていく。
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