夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 泣くのを我慢しているのだろうか。無理に笑おうとしているのだろうか。
 再会した夜、タクシーの中で必死に涙を堪えていた顔を思い出した。

「一緒に仕事がしたかった」

 決定的な言葉に、息苦しさを覚えた。
 百香ちゃんはあの頃と変わっていない。今でも、あの正義感と優しさをもっている。
 静かに、だけど深く息を吸って意を決する。

「今からでも遅くないよ」
「……え?」
「パラリーガルを目指さないか」

 いや目指してほしいんだ。そうして、俺の横にいて欲しい。
 逸る思いを押し込めて返事を待っていると、か細い声が「パラリーガル」と呟いた。だけど、大学受験で失敗したことが未だに枷となっているのか、快い返事がすぐくることはなかった。

 パン屋に遠慮をしているのか、それとも俺になのか。
 小さく「迷惑をかけちゃう」と零れた言葉は、目に見えない壁のようだった。

 昔みたいに、俺を追ってきてほしい。
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