夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 立ち止まった渉さんは、私を引き寄せると両手を背中に回した。

「俺の恋人は仕事だった、ていったよね?」
「それは……」
「百香ちゃん、周りじゃないくて俺を見て」

 少し屈むようにして、顔を近づけると「よそ見してると危険だよ」という。
 どういう意味だろうかと考えていたら、その唇が耳に寄せられた。

「人目が気になるなんていったら、誰もいないところに攫っちゃうよ」

 低く甘い声が囁いた。
 突然のことに驚いて渉さんから離れようとすると、逞しい腕が腰に回される。私を見つめながら「なんてね」と、おどけたように笑うけど、その眼差しは本気だというように熱を孕んでいた。
 恥ずかしさに、耳がじわじわと熱くなっていく。

「からかわないでください」

 渉さんの胸を少し押してみたけど、離れそうにない。
 私は周りの視線が気になって仕方ないのに、彼はちっとも気にしない。これが、ニューヨーク帰りというやつかなんて思っていたら「いつだって本気だよ」と囁かれた。
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