夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「これは実務経験なしでも受けられるから、日弁連の認定試験の前に挑戦したらいい。大手事務所に就職を考えるなら、簿記や秘書検定もあると効果的だけど、百香ちゃんは俺の事務所で働くのが決定なわけだし」
「簿記と秘書検定は、どちらも二級以上もってますよ」
「……え?」
「それは、卒業前にとってます」

 やりたい仕事がなかったからこそ、あれこれ資格は取ったんだよね。

「……なんで、法律事務所に就職しなかったんだ? それ、充分ありがたいんだけど」
「そうなんですか?」
「いっただろう。パラリーガルは弁護士のスケージュール管理もするって。相談者の接客もあるし、ビジネスマナーを身につけているのは、アピールポイントになるよ」

 なんでといわれても、答えに困った。
 多分だけど、高校生の私は「弁護士になる」のが大きな目標だったから、その道が絶たれた直後、別の形で関わることに抵抗があったのかもしれない。
 それに、関わったら渉お兄ちゃんと会ってしまうかもと考えたら、怖かったのかも。

 五年前を思い出して首を捻っていると、小さなため息が聞こえた。

「本当に、頼りなくてごめんな」
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