夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 ここだけは譲れない。
 弁護士になることは諦めてしまった。それが恥ずかしくて、渉さんと二度と会わないと決めていた。なのに、こうして傍に置いてもらう形になった。

 だったら、堂々と肩を並べる女にならなくちゃ。甘えてばかりじゃダメだもの。

 真剣な眼差しを渉さんに向けて書籍を両手で抱えると、彼は根負けしたというように溜息をつきながら「わかった」といって笑った。

「それじゃ、別の形での投資を考えないとな」
「……?」
「合格まで、一緒に頑張ろうな」

 そっと頭にのせられた手が髪を撫でた。
 高校の時、法学部を目指すって宣言した日と同じく撫でる優しい指先に、嬉しさと気恥ずかしさが込み上げた。

 本を買い終えてレジを離れようとした時だった。
 平積みされた本を手に取って読んでいた渉さんが、鋭い眼差しを人の流れに向けた。それこそ、 親の仇かってくらい睨みつけている。
 なにを見ているのか気になったけど、そこあるのは休日の人混みだった。

「渉さん?」
「……え、ああ、買ってきた?」

 声をかけると、少し動揺を見せた渉さんは本の表紙を閉じ、それを元の場所に戻した。

「なにかありました?」
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