夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます

第6話 幸せに忍び寄る影

 ほのかに明かりが灯る落ち着いたバーに、会話を邪魔しないピアノジャズがしっとりと流れている。

 カウンターの向こうで、バーテンダーの真奈さんはグラスを磨きながら微笑んでいた。その前で、私はカウンターテーブルに頬を押し付けて「予想以上にハードです」なんて泣き言を呟いた。

 久しぶりに訪れた行きつけのバーは、変わらずに私を優しく迎え入れてくれる。
 大好きなジントニックを飲んで、気持ちがふわりとし始め、つい真奈さんに「恋と勉強の両立って難しい」と愚痴をこぼしてしまった。それから、渉さんと付き合うことになったとか、夢を叶えるために勉強を始めたとか打ち明けて今に至る。

「百香ちゃんから惚気話を聞く日が来るなんてね」
「そんなんじゃないですよ」
「でも、彼が気になって勉強が進まないんでしょ?」
「だって……」

 先週、参考書を買った後に渉さんのマンションへ行ったことを思い出す。
 参考書の確認とこれからの勉強スケジュールを検討しただけなんだけど。重要な項目をチェックしていると渉さんの肩が触れ、体温がじわりと伝わってきた。
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