夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 そっと見た横には、当然だけど渉さんの顔があって、その近さに心臓が跳ね上がった。
 私の緊張に気付いたのか、こっちを見た渉さんは「警戒されたら悲しいな」なんていって笑うと、私の頬に口付けるし。
 
 触れた唇と熱い吐息を思い出して、さらに体温が上がった。
 覚えたものが湯気になって、全部出ていっちゃうんじゃないかってくらい、血液が沸騰するような気分だった。

「家で一人の時も勉強するんでしょ?」
「もちろん! 今は、平日わからなかった点をまとめて、週末、渉さんに解説してもらってるんです」
「真面目なデートね。でもそれなら、勉強はほどほどにして彼に甘えてもいいんじゃない。恋のレッスンだって素敵だと思うのよ」
「こ、恋いのって、そんな、私と渉はまだ──」

 いいかけて、慌てて口を閉ざしたその時だった。
 入り口のドアに下がったベルが、カランカランと乾いた音を立てた。振り返ると、見覚えのある男が入ってきた。あの酔っ払い男だ。
< 65 / 132 >

この作品をシェア

pagetop