夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「先生、いらっしゃいませ」

 かけられた声にハッとしてカウンターを振り返ると、安堵の笑みを浮かべた真奈さんが私たちを見ていた。

「百香ちゃん、少し酔っているみたいだから、送って下さるかしら?」
「ええ、そのつもりで迎えに来ました。タクシー呼んでください」

 額の汗を拭った渉さんは、穏やかに受け答えをした後、私を見ると「大丈夫?」と微笑んだ。それに頷くと、もう一度ぎゅっと抱きしめられる。

 耳元で、周りに聞こえないように「よく堪えたね」と囁かれた。

 お会計をすませた頃、迎えのタクシーが到着した。
「次の来店はお二人でいらしてくださいね」という真奈さんにお礼をいい、私は渉さんに手を引かれながらバーを後にした。

 背中に刺さるような視線を感じたけど、気付かないふりをして、渉さんの手を握りしめていた。

 タクシーに乗り込むと、渉さんは運転手さんに「みなとみらい五丁目で」と行き先を告げた。だけど、それは私の住んでいるマンションの住所ではない。
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