夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「渉さん、あの……」
「ひとまず俺のマンションに行こう。さっきの男がつけてくるとも限らない」

 運転手に出していいか訊かれ、渉さんは静かに「お願いします」といい、シートに背中を預けた。
 渉さんの部屋に上がらせてもらったことはあるけど、でも、こんな夜に行くなんて……それって、泊まるってことなのかな。

 男が追ってくるかもしれないという緊張に加え、女としての緊張に体が強張る。

 だって、鞄の中にあるコスメポーチは必要最低限だし、当然だけど着替えだってない。幸いなことに、明日は仕事休みだから服はこのままでもいいけど。

 膝の上で握りしめ、黙り込んでぐるぐると考えていた。すると、渉さんの掌がそっと重なった。

「明日は仕事お休みだったね。朝、車で家まで送っていくよ」

 まるで私の不安や考えを読んだように、渉さんは穏やかな笑みを浮かべた。

「俺は出社しないとだから、少し早く家を出ないとだけど」
「そんな迷惑は」
「迷惑なんかじゃない」

 私の言葉を遮った声は真剣で、私の手を握る指に少しだけ力が込められる。

「百香ちゃんからのメッセージを見て胆が冷えたよ」
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