夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「ありがとうございます」
「疲れただろう?」

 カップをテーブルに下ろした渉さんは、ネクタイを解きながら私の横に腰を下ろした。

「もう、なにがなんだか……」
「あの男は、本当になにもしなかった?」
「なにも……黙って座って、それで、私が飲んでいたジントニックを見て『同じものを』って頼んだだけで」

 でも、それが気味悪くて怖かった。なにか因縁をつけられるんじゃないかと思えて、渉さんを呼ばずにはいられなかった。

「同じものか……ますます怪しいな」
「怪しい?」
「ストーカーと聞くと、恋愛からの付き纏いを想像しがちだけど、憎しみから発展するケースも少なくないんだ」
「……ストーカー?」

 まさかの言葉に背筋が寒くなった。
 だって、バーで口論になっただけの他人よ。そんなに私が憎いなら、同じ店に来なければ良いだけのこと。それなのに、わざわざ付き纏うために店まできたってこと?

「真奈さんじゃんなくて、私なの?」
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