夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「顔は割れている。動画を送る。すまないが、早急に頼みたいんだが……ああ、助かる」

 まるでドラマを観ているようだった。
 わが身に降りかかっていることだと認識できないまま黙っていると、しばらくして通話が切られた。

「後は店への協力依頼だが、明日、店は開いているかい?」
「私はお休みですけど、お店は開いてます。でも、渉さんだってお仕事が」

 今夜だって、仕事をしていただろう渉さんは、急いで駆け付けてくれた。これ以上、迷惑をかけるのは心苦しい。
 戸惑いながら俯くと、優しい声が耳に触れた。

「百香ちゃんより大切なものはないよ。仕事は都合をつけられるから気にしなくていい」
「でも、迷惑かけちゃう。それに、私の勘違いかもしれないのに」
「勘違いなんかじゃない」

 静かな声が告げた言葉に、息を呑んだ。

「二人で本屋に行ったとき、あの男を見たんだ。あの時は偶然の可能性も否めなかったけど、偶然が重なればそれはもう必然だ」

 本屋で見た渉さんの厳しい眼差しを思い出し、背筋に緊張が走る。
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