夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 あの時、渉さんは知り合いを見かけたといっていた。でもそれは、私を不安がらせないための嘘だったのね。

 いつも私は迷惑ばかりかけてる。だったら、せめて対価を払った方がいいんじゃないか。

「……それなら、弁護士事務所に依頼を」
「俺が守りたいんだ」

 私の思惑をすぐに察したのだろう。渉さんは私の言葉を遮ると、変わらない優しさで見つめてくれる。
 その眼差しに、言葉を奪われた。

 今まで何度、この真っ直ぐな眼差しに心を救われてきただろう。

「俺は弁護士としてここにいるわけじゃない。百香ちゃんを守るために、自分の能力を最大限に利用するただの男だよ」
「渉さん……」
「これは仕事なんかじゃない。俺を信じて、頼ってくれ」

 わかったねと訊かれ、ただ頷くことしかできなかった。
 渉さんの背中に両手を回し、縋りつくようにすると、身体がぴったり合わさるほど強く抱きしめられる。鼓動が触れあい、二人の隙間が埋まっていくような気がした。
< 80 / 132 >

この作品をシェア

pagetop