夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 男の視線が名刺に注がれる。私も釣られて見ると、そこにはアークス&リベラス国際法律事務所・佐伯渉と書かれていた。

「……アークス&リベラスって……マジかよ……」

 男の声が僅かに震えた。
 それもそのはず。アークス&リベラスといえば、テレビCMでもよく目にする大手法律事務所だ。海外にも拠点を持っていて、企業や代議士の顧問弁護士も多数いる。

 だけど、私はその事務所名よりも、弁護士の名前に目を奪われていた。だって、そこにある名前は二度と会うこともないと思っていた初恋の人と同姓同名だったから。

 早まる鼓動を抑えるように、胸元で手を握りしめる。男性の顔を見上げれば、柔らかな店内の光が綺麗な横顔を照らしていた。
 懐かしいお兄ちゃんの笑顔が重なる。
 朗らかに微笑んでいた男性は、すっと笑顔を消すと少し低くなった声が「相談は無料ですから」といった。

「本当に困ったら、いつでもご相談ください」
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