夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
 いつだって、渉さんのことを信じている。だけど、今は頼ることしかできない自分の無力さに、ほんの少し心が苦しくなった。

「さて、こうしていつまでも抱きしめていたいところだけど、そろそろ休む用意をしようか」

 私を開放した渉さんは、まだ温かさを残すカップを手に取ると、それを私に握らせた。

「あの、私も何かお手伝い」
「疲れただろう。そこで待っていて」

 渉さんは私の頭を撫でるようにしてリビングを離れ、バスルームの方へと向かう。それからしばらくして、スーツからスウェットに着替えて戻ってきた。

 タオルと一緒に色違いのスウェットが差し出される。

「今、風呂ためてるから。もう少ししたら温まっておいで。それと、寝る時はこれ使って。俺のだからデカいと思うけど」

 渡された肌触りのいいタオルと、ライトグレーのスウェットを受け取り、渉さんの部屋に泊まるという事実が現実味を帯びはじめた。
 さっきまでストーカーに合っているかもという不安で怯えていた心が、とたんに騒がしくなる。

「それとベッドだけど、百香ちゃんが嫌じゃなければ、横で寝ていいかな?」
「──!?」
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