夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「……二度と会えないと思って五年をすごしたんだ。一晩くらい問題ない」

 深く息を吸い、問題ないと繰り返し己に言い聞かせた。
 再びディスプレイに向かい、百香ちゃんがバスルームから出てきてベッドに入るまで、煩悩を上書きするように起案書へと目を通し続けた。

 日付が回った夜中の一時。
 さすがに百香ちゃんは眠りに落ちているだろう。
 ベッドルームに静かに入ると、薄暗い中で布団に覆われた肩が静かに上下していた。

 起こさないよう気を遣いながら横に滑り込むと、百香ちゃんは小さな声をこぼして寝返りを打った。

 こちらを向いた愛らしい寝顔に、自制心が砕かれそうになる。
 デカすぎる俺のスウェットから細い鎖骨の線が見えた。袖もずいぶん長いのだろう、シーツに触れる手はほんの少し指先が見えるほどだ。

 こんな形で一緒に夜をすごすとは。
 残念な思いと同時に、百香ちゃんを抱きしめたくなる。

 頬にかかる柔らかい髪をそっと退けて、後ろへと優しく撫でつけた。すると、閉ざされていた瞼がそっと上がった。

「ごめん。起こしたかな」
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