夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「もちろん百香ちゃんが自慢のパラリーガルになるって信じてるよ」

 フロントガラスを見つめたまま「だけど」というと、百香ちゃんに緊張が走ったようだ。彼女の細い手に握られた契約書が、かさりと鳴った。

「恩返しじゃなくて、生涯かけて俺を愛してくれるかな?」

 そういったタイミングで、前方に見えた交差点の信号が赤に変わる。
 静かにブレーキを踏んで横を見れば、百香ちゃんは契約書を握りしめたまま俺を見つめていた。その頬をいくつもの涙が濡らしている。

 そっと指を伸ばして優しく擦ると、はにかんだ顔で再び、今度は一度目よりもハッキリ「はい」と頷く声が返ってきた。

「婚約指輪を買いに行かないとな。それと、ご両親にも挨拶をしないと」

 笑ってそういうと、百香ちゃんの顔が真っ赤に染まる。

「店の店長への報告が済んだら、すぐ買いに行こう」
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