夢から逃げた私ですが、過保護なエリート弁護士に溺愛されてます
「コスメのサブスクに入っていて、毎月、サンプルが届くんです」

 ポストから薄い段ボールの箱を取り出すと、渉さんは神妙な顔で「ポスト直か」と呟いた。

「渉さん?」
「ああ、いや、ごめん。少し気になってね」

 なんのことだろうと首を傾げる。
 すると、渉さんはスマホを取り出し、ポストの投入口に手をかけるとシャッターを切った。

「見てごらん」

 差し出された画像は、なにもない空っぽのポスト内部だった。フラッシュを浴びていて、金属の質感までわかる。もしも、ここに郵便物があったら、差出人名が上に向いていたら──背筋が震えた。

「公共料金の明細はウェブに切り替えている?」
「は、はい……」
「ごめん、不安がらせるつもりはないけど、部屋が特定されている可能性も考慮した方がよさそうだ」

 スマホから画像を消した渉さんは、深く息をつく。
 浮ついていた気持ちが一気に急降下する。誰かに足を引っ張られ、落ちていくような感覚だった。

「ひとまず部屋に行こう」

 腰に回された手に力強く引き寄せられ、よろけながら渉さんに寄り掛かる。
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