和霊




僕はエンターテイナーになろうと必死だった。いかにして、彼女を笑わせるか、それだけを考えていた。元々の僕は、真面目で、ユーモアのセンスは皆無だった。小学校の頃の卒業文集では、好きな食べ物や好きな芸能人など、各々のプロフィールを書く欄があって、周りがふざけて書く中、僕は「カレーライス」、「中村俊輔(サッカー選手)」と書いた。チャームポイントの欄には、みんな眉毛や、髪の毛と書く中、一人真剣に考えて、自分の特徴はなんだろう。そうだ、身体が瘦せている。「身体が細い」と書いた。それを見た当時の女の担任は、声を上げながら笑い、周りもそれに釣られて嘲笑した。でもそれくらいしか思い当たらず、かと言って、コンプレックスをチャームポイントにしたくなかったのだと思う。


中学に入ってからもそれは変わらない。宿題は先生の「提出物も内申点に関わる」という言葉を信じて、忘れず納期までに出したし、合唱コンクールでは誰もやりたがらなかった指揮者を買って出た。給食当番や掃除当番も真面目にこなした。担任の先生からは、真面目過ぎると言われた。だから、ふざけようとしたけれど、どうふざければいいのかについて、真剣になって考える、そういうタイプだった。


そんな僕には、エンターテイナーになる気質がない。それでも彼女が少しでも笑ってくれるよう、過去のことを中心に、面白かった話をした。僕の話で彼女が笑う確率は3割くらいで、これが野球選手なら十分なのだが、半分以上は面白くない、興味がない話をしてしまったことになる。


それなのに、彼女は僕を愛してくれた。そんな彼女を僕も愛した。



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