和霊




彼女は、本当に真面目だった。僕がコンビニで買ってきたチルドのラーメンを、二人で食べた夜、彼女はえらく不機嫌だった。僕が何を話しても、「うん」、「へぇー」、「そうなんだ」の3つでやりくりし、普段は3割は笑ってくれる話も、この夜ばかりは、ノーヒット。僕は彼女が怒っているに違いないと思った。何をしてしまったのか、一生懸命考えた。普段、寝る前には愛をささやき合う時間も、この夜は、お互いに無言で、冷蔵庫のコンプレッサーのビーという音が、やけに大きく聞こえた。


翌朝、彼女は僕に「ごめん」と謝ってきた。


「いや、僕の方こそ」


「そうじゃなくて。昨日、胃が痛かったんだよ。キミが買ってきたラーメンを食べて。でも、せっかくキミが買ってきてくれたラーメンでお腹を壊したなんて言ったら、悪いかなって思って、言えなかった」


それを聞いたとき、ああ、僕はこの子を一生愛そうと決めたのだ。別に僕がラーメンを作ったわけでもないし、そのラーメンが腐っていたわけでもない。彼女は元々、胃が悪く、よくお腹を壊した。その夜は、僕にとって初めて彼女がお腹を壊した時だったから、知らなかったのだが、それにしても、そんなことで悪いと思える人。そういう人こそ、きっと世間でいうところの、いい人であり、優しい人なのだ。



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