和霊
過去の恋愛の話を彼女にしようとすると、彼女は決まって耳をふさいだ。そりゃ、誰だって恋人の過去の恋愛をきけば、不機嫌にもなるし、彼女のように耳をふさぎたくなるものだ。これは僕が悪い。でも、僕は結果悪くなった過去の恋愛に、何度も助けられた(と言っても、小説のネタとしての話だが)し、過去の僕がどんな人間だったか、ただ知ってほしかっただけなのだ。それに、いくら過去の恋愛とはいえ、彼女を笑わせる自信のあるネタもあった。今はこうしてキミを愛しているわけだから、さらば過去よ、って感じで、多少は囚われながらも、二人でこれから新しく愛を育んでいこう、というメッセージでもあった。
僕は不器用だ。でも、彼女も不器用だと思う。
でも、僕はそんな不器用な彼女のことが、大好きだし、彼女もそんな僕だったから、受け入れてくれたのかもしれない。
羽音が優しく。どこからともなく聞こえてくる。「これは、蝶が舞う雅楽である」と何かの小説に書いたことがある。今考えても、意味が分からないし、深みもない言葉だ。
僕たちの羽音はどうだろう。月並みな表現ではあるが、「不協和音」とでも称しようか。