夜明けが世界を染めるころ
それからの1年は、まるで光の速さで過ぎていった。

剣術は、セナのおかげでぐんと上達した。
騎士団員たちにも互角以上に立ち向かえるようになったけど、セナだけはどうしても倒せず、悔しくて歯噛みすることもあった。

お嬢様や騎士団員の人たちに教えてもらい、文字も書けるようになった。
最低限の礼儀作法も、ぎこちなくはあるけれど身についてきた。

季節ごとのお嬢様との思い出も増えていく。

春には桜の下でお団子を頬張り、
夏は騎士団員みんなで川に飛び込んではしゃいだ。
秋には焼き芋を食べながら紅葉を眺め、
冬には雪の中で雪合戦をしてびちゃびちゃになり、ユウリに怒られたっけ。

――今まで生きてきた中で、間違いなく一番充実して、幸せな1年だった。

『お嬢様が、生きていてよかったと思えるように』
その言葉は、今では実感として胸に刻まれていた。
この場所を絶対に失いたくない。

そして、また春が来た。

「ねぇ、テオ。明日は王国騎士団員の試験でしょ!
髪の毛、整えてもいいかな?」

お嬢様に言われ、自分の長く伸びた真っ黒な髪に手が伸びる。

「うん」

その一言に、ぱぁっと笑顔が広がる。

「よし、任せて!かっこよくするからね」

そう言うと、お嬢様はどこから出したのか、手際よくヘアピンやエプロンを取り出す。
迷いなく整えていく姿は、まるで小さな職人のようだった。

「お嬢様、手慣れてますね」

セナも思わず感心した声を漏らす。
目の前で髪を整えるお嬢様を見て、心臓が少し早くなるのを感じた。

(……大丈夫かな、このまま切られても)

緊張と期待が入り混じる中、
お嬢様の手は迷いなく動き、髪が少しずつ形を整えていく。
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