夜明けが世界を染めるころ
「話してくれてありがとうございます」
「もう色々ありすぎて、頭がパンクしそう」
冗談めかして言ったつもりだったけれど、
声の奥に本音が滲んでしまったのかもしれない。
「何でも協力します。
それが俺の役目ですから」
その言い方が、頼もしくて――
でも同時に、胸の奥がちくりと痛んだ。
セナは、いつもそうだ。
自分のことは後回しで、私のために動く。
頼りになる。
本当に、心から。
それなのに、
もっと自分を大事にしてほしい、なんて思ってしまう。
――頼み事をしておいて、私はなんてわがままなんだろう。
「……ありがとう」
小さくそう言うと、
セナが一歩、距離を詰めてきた。
「なんでそんな、申し訳なさそうな顔するんですか。
あの時は俺のことを6人がかりで容赦なく倒しに来たのに」
イタズラに笑う。
「あれは…」
私が口籠っていると困ったように、でも優しく笑って。
「もっと頼ってください。
一緒に、何とかしましょう」
どうやら、私はうまく笑えていなかったらしい。
次の瞬間、ほっぺをむにっとつままれる。
「……あのぉ」
抗議しようとした声は、弱々しくて、
自分でも情けなくなる。
「大丈夫です」
セナは、断言するように言った。
「何とかなります」
「……うん」
不思議だ。
セナにそう言われると、本当に大丈夫な気がしてくる。
胸の奥にあった不安が、少しだけ形を失っていく。
「あ、そうだ、これ」
セナが手を差し出した。
「ん?」
私は無意識に手を伸ばす。
そこには、小さな小箱があった。
中を開けると、タンザナイトのピアスが揺れている。
蒼く淡く光る宝石が、一粒ずつ静かに輝いていた。
「……くれるの?」
「お嬢様に似合うと思って」
柔らかい声。
でも、どこか強さも混じっている。
私は小さく笑い、でもどこかぎこちなく、
「ありがとう」とだけ言った。
「つけてみますか?」
「うん、お願い」
そういうとセナの手が、そっと私の髪に触れる。
耳にかかっていた一房を、丁寧に後ろへ流す。
――近い。
耳元に、微かな違和感。
触れられているのは一瞬なのに、
まるで時間がゆっくり流れているみたいだった。
壊れ物を扱うような、優しい手の感触。
息をするのも、忘れてしまいそうになる。
「……じっとしててください」
低く、落ち着いた声。
胸の鼓動が、やけに大きく響く。
この距離、この空気。
騎士と主。
それだけじゃ説明できない何かが、確かにそこにあった。
それでも私は、何も言わない。
言ってしまったら、
この均衡が崩れてしまう気がして。
「もう色々ありすぎて、頭がパンクしそう」
冗談めかして言ったつもりだったけれど、
声の奥に本音が滲んでしまったのかもしれない。
「何でも協力します。
それが俺の役目ですから」
その言い方が、頼もしくて――
でも同時に、胸の奥がちくりと痛んだ。
セナは、いつもそうだ。
自分のことは後回しで、私のために動く。
頼りになる。
本当に、心から。
それなのに、
もっと自分を大事にしてほしい、なんて思ってしまう。
――頼み事をしておいて、私はなんてわがままなんだろう。
「……ありがとう」
小さくそう言うと、
セナが一歩、距離を詰めてきた。
「なんでそんな、申し訳なさそうな顔するんですか。
あの時は俺のことを6人がかりで容赦なく倒しに来たのに」
イタズラに笑う。
「あれは…」
私が口籠っていると困ったように、でも優しく笑って。
「もっと頼ってください。
一緒に、何とかしましょう」
どうやら、私はうまく笑えていなかったらしい。
次の瞬間、ほっぺをむにっとつままれる。
「……あのぉ」
抗議しようとした声は、弱々しくて、
自分でも情けなくなる。
「大丈夫です」
セナは、断言するように言った。
「何とかなります」
「……うん」
不思議だ。
セナにそう言われると、本当に大丈夫な気がしてくる。
胸の奥にあった不安が、少しだけ形を失っていく。
「あ、そうだ、これ」
セナが手を差し出した。
「ん?」
私は無意識に手を伸ばす。
そこには、小さな小箱があった。
中を開けると、タンザナイトのピアスが揺れている。
蒼く淡く光る宝石が、一粒ずつ静かに輝いていた。
「……くれるの?」
「お嬢様に似合うと思って」
柔らかい声。
でも、どこか強さも混じっている。
私は小さく笑い、でもどこかぎこちなく、
「ありがとう」とだけ言った。
「つけてみますか?」
「うん、お願い」
そういうとセナの手が、そっと私の髪に触れる。
耳にかかっていた一房を、丁寧に後ろへ流す。
――近い。
耳元に、微かな違和感。
触れられているのは一瞬なのに、
まるで時間がゆっくり流れているみたいだった。
壊れ物を扱うような、優しい手の感触。
息をするのも、忘れてしまいそうになる。
「……じっとしててください」
低く、落ち着いた声。
胸の鼓動が、やけに大きく響く。
この距離、この空気。
騎士と主。
それだけじゃ説明できない何かが、確かにそこにあった。
それでも私は、何も言わない。
言ってしまったら、
この均衡が崩れてしまう気がして。