夜明けが世界を染めるころ
「ジョルジュ陛下は、ガイル様の仕業には気付いていないのですか?」
思わず問いかける。

ディラン殿下は肩をすくめる。
「うーん、気付いてはいるよ」

私は眉をひそめる。
「それなら、なぜそのままにしているのですか?」

殿下は静かに説明する。
「確実な証拠がないのもあるが、ガイル伯父上は紅輝オパール公爵家とも繋がりが深くてね。軍事用の武器や兵器の開発や整備に関わっているんだ。ジョルジュ陛下もその功績を評価している」

なるほど、だからすぐには手を出せないということか。
オパール公爵家ってこの前私がお見合いしたリチャードの家じゃないか…

「下手に動けば、国の安全保障に影響しかねない、ということですね」
そういうと殿下は静かにうなずく。

「それもあるし、あとは純粋に、自分でどうにかしてみろ、という意味もあるのかもしれない」
殿下は紅茶を置き、静か私を見つめる。

その言葉に、ほんの少し胸の奥がざわつくのを感じた。
確かに、ただの政争ではなく、この国の未来をかけた緊張感の中で動いているのだ。
そして自分たちも、知らず知らずその一部になっている。

「……なるほど、難しい問題ですね」
私は視線を下ろし、指先でカップを回す。


「このままでよろしいのですか?」
思わず口に出してしまった。
こんな近くに危険な存在がいるのに、何もしないままでいいのだろうか、と。

殿下は肩をすくめ、軽く微笑む。
「よくないね。それについては追々かな」

言葉は軽く聞こえるが、確かに計画はあるようだ。
しかし、その内容を教えるつもりはなさそうだ。
これは機密事項だ。
たとえ聞いたところで、自分にできることは限られている。

殿下もこれ以上は話すつもりはないだろう。

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