夜明けが世界を染めるころ
それよりも、本棚に並ぶ書物が気になって仕方がない。

「あの、殿下」

「なんだい?」

「その本棚にある本を、拝見してもよろしいですか?」
遠慮がちに指先で示す。

「ああ、もちろんだよ」
殿下はにっこりと微笑んだ。

「ありがとうございます」

私はさっと立ち上がり、本棚の前へ向かう。
ここは別荘地のはずなのに、並んでいるのは見慣れない専門書や古文書ばかりだ。
……さすが王族。趣味も蔵書も一筋縄ではいかない。

「これ、気になる……」

背伸びをしてみるが、あと少し届かない。

その瞬間、背後に気配がして、殿下が立ち上がったのがわかった。
私の頭のすぐ上を通るように、すっと長い腕が伸びる。

「これかな?」

軽々と本を抜き取る姿に、思わず見上げてしまう。
背が高く、手足もすらりと長い。整いすぎている体格だ。

(……恵まれすぎでしょ)

個人的には、もう少し筋肉質な方が好みだけど。
そんなことを考えているなんて、殿下にはもちろん内緒だ。

殿下は何も知らない顔で、本を差し出してきた。

「はい。君が取ろうとしていたのは、これだろう?」

「ありがとうございます」
素直にお礼を言い受け取る。
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