夜明けが世界を染めるころ
「気に入ったものがあれば、持って行っても構わないよ」
「……え?」
思わず声が裏返る。
嘘でしょう。欲しい。正直に言えば、喉から手が出るほど欲しい。
でも――だめだ。殿下の私物だ。冷静に考えれば、あまりにもおこがましい。
「いえ、それは出来ません」
即答したはずなのに。
「それにしては、言動と行動が伴っていないように見えるけど?」
殿下は、私の手元に視線を落とし、くすっと笑った。
いつの間にか、私は彼から受け取った本を両手でがっちり掴んでいる。
……しまった。
「こ、これは、その……」
言い訳を探している間に、
ゴロゴロ……ドシャーンッ!
耳をつんざくような雷鳴と同時に、部屋の明かりがふっと消えた。
一瞬にして、闇。
「わっ……!」
驚いて手から本を落としてしまう。
床に落ちた音を頼りに、拾おうとしゃがみ込んだ、その瞬間。
ピカッ――
雷光が部屋を一瞬だけ白く照らす。
その刹那、目の前にあったのは――
燃えるような、赤。
エメラルドではない。
深く、濃く、まるで宝石そのもののような――ルビーの瞳。
思考より先に、言葉がこぼれ落ちていた。
「……殿下の瞳、ルビーのように見えるのですね」
一拍の沈黙。
「……まさか、君に見られてしまうとは。不覚だったな」
暗闇の中で、殿下の表情は見えない。
けれど声は、いつもの余裕を帯びたものではなく、どこか――寂しさを含んでいるように聞こえた。
「……え?」
思わず声が裏返る。
嘘でしょう。欲しい。正直に言えば、喉から手が出るほど欲しい。
でも――だめだ。殿下の私物だ。冷静に考えれば、あまりにもおこがましい。
「いえ、それは出来ません」
即答したはずなのに。
「それにしては、言動と行動が伴っていないように見えるけど?」
殿下は、私の手元に視線を落とし、くすっと笑った。
いつの間にか、私は彼から受け取った本を両手でがっちり掴んでいる。
……しまった。
「こ、これは、その……」
言い訳を探している間に、
ゴロゴロ……ドシャーンッ!
耳をつんざくような雷鳴と同時に、部屋の明かりがふっと消えた。
一瞬にして、闇。
「わっ……!」
驚いて手から本を落としてしまう。
床に落ちた音を頼りに、拾おうとしゃがみ込んだ、その瞬間。
ピカッ――
雷光が部屋を一瞬だけ白く照らす。
その刹那、目の前にあったのは――
燃えるような、赤。
エメラルドではない。
深く、濃く、まるで宝石そのもののような――ルビーの瞳。
思考より先に、言葉がこぼれ落ちていた。
「……殿下の瞳、ルビーのように見えるのですね」
一拍の沈黙。
「……まさか、君に見られてしまうとは。不覚だったな」
暗闇の中で、殿下の表情は見えない。
けれど声は、いつもの余裕を帯びたものではなく、どこか――寂しさを含んでいるように聞こえた。