夜明けが世界を染めるころ
殿下の視線から逃れるようなら口を開く。
「蝋燭はありますか?」
立ち上がりながら、手探りで近くを探す。
「私がやろう」
殿下も立ち上がり、引き出しから蝋燭を取り出すと、慣れた手つきで火を灯した。
揺れる蝋燭の炎の中に、ルビー色の瞳が映り込む。
「エメラルドの瞳を持つ人は、皆、暗闇では殿下のようにルビーのような色になるのですか?」
「いや、私だけだよ。初代アレキサンドライト国王がそうだった、という話は聞いたことがあるけどね」
「そうでしたか……唯一無二で、格好いいですね」
思ったままを口にすると、殿下は一瞬だけ目を細めた。
「君にそう言われると、この瞳も悪くないと思えてくる」
蝋燭を持った反対の手が、そっと私の髪を掬い上げる。
指先が触れた瞬間、心臓が小さく跳ねた。
ルビーの瞳が、真っ直ぐに私を映している。
その奥で、何を考えているのかは読み取れない。
――と、その時。
小走りの足音が近づいてきた。
「殿下! ご無事ですか?」
灯りを手にしたレイが、慌てた様子で部屋に入ってくる。
「ああ、大丈夫だ」
殿下は静かにそう答え、私の髪からそっと手を離した。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。落雷の影響で停電しておりまして、今夜はこのままになりそうです」
レイさんが、申し訳なさそうに頭を下げる。
「大丈夫ですよ」
「灯りはお持ちしましたので、ご用意いたしますね」
そう言って、持ってきた洒落た蝋燭に手際よく火を灯していく。
柔らかな光が増え、部屋は先ほどよりもずいぶん明るくなった。
「レイ、ティアナ嬢はこちらで本を読むそうだ。飲み物を持ってきてくれ」
「かしこまりました」
レイさんは一礼すると、足早に部屋を出ていった。
部屋で読んでもよかったけれど、灯りをいくつも用意するのは確かに大変だろう。
ここは素直に、この場所をお借りすることにしよう。
「不便をかけるが、ゆっくりしてくれ」
「お気遣いありがとうございます」
殿下はそう言って別の本を手に取り、読み始めた。
それを合図に、私もそっとページを開く。
蝋燭の炎が静かに揺れ、
雷鳴だけが、遠くでこの静寂をかすかに揺らしていた。
「蝋燭はありますか?」
立ち上がりながら、手探りで近くを探す。
「私がやろう」
殿下も立ち上がり、引き出しから蝋燭を取り出すと、慣れた手つきで火を灯した。
揺れる蝋燭の炎の中に、ルビー色の瞳が映り込む。
「エメラルドの瞳を持つ人は、皆、暗闇では殿下のようにルビーのような色になるのですか?」
「いや、私だけだよ。初代アレキサンドライト国王がそうだった、という話は聞いたことがあるけどね」
「そうでしたか……唯一無二で、格好いいですね」
思ったままを口にすると、殿下は一瞬だけ目を細めた。
「君にそう言われると、この瞳も悪くないと思えてくる」
蝋燭を持った反対の手が、そっと私の髪を掬い上げる。
指先が触れた瞬間、心臓が小さく跳ねた。
ルビーの瞳が、真っ直ぐに私を映している。
その奥で、何を考えているのかは読み取れない。
――と、その時。
小走りの足音が近づいてきた。
「殿下! ご無事ですか?」
灯りを手にしたレイが、慌てた様子で部屋に入ってくる。
「ああ、大丈夫だ」
殿下は静かにそう答え、私の髪からそっと手を離した。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。落雷の影響で停電しておりまして、今夜はこのままになりそうです」
レイさんが、申し訳なさそうに頭を下げる。
「大丈夫ですよ」
「灯りはお持ちしましたので、ご用意いたしますね」
そう言って、持ってきた洒落た蝋燭に手際よく火を灯していく。
柔らかな光が増え、部屋は先ほどよりもずいぶん明るくなった。
「レイ、ティアナ嬢はこちらで本を読むそうだ。飲み物を持ってきてくれ」
「かしこまりました」
レイさんは一礼すると、足早に部屋を出ていった。
部屋で読んでもよかったけれど、灯りをいくつも用意するのは確かに大変だろう。
ここは素直に、この場所をお借りすることにしよう。
「不便をかけるが、ゆっくりしてくれ」
「お気遣いありがとうございます」
殿下はそう言って別の本を手に取り、読み始めた。
それを合図に、私もそっとページを開く。
蝋燭の炎が静かに揺れ、
雷鳴だけが、遠くでこの静寂をかすかに揺らしていた。