夜明けが世界を染めるころ

ユウリside

お嬢様が「サーフェス」という男と話をしに行ったのを、確かにこの目で確認した。
その直後――ほんのわずかな間を置いて、爆破音が響いた。

「……っ」

嫌な予感が、背筋を走る。

お嬢様は?
思わずセナと顔を見合わせ、駆け出そうとした、そのときだった。

宝石に“飲まれかけた”人たちが、次々と通路へ溢れ出してきたのは。

虚ろな目。
不自然に光る胸元。
正気と狂気の境目で揺れている表情。

「……どういうことだ?」

混乱が一気に押し寄せる。
温室の方で何かが起きている。
それはわかる。でも――。

そう思っていると、群衆の向こうに、見覚えのある人物が目に入った。

「こちらです」

静かな、しかしよく通る声。

殿下の側近――レイさんだった。
すでに剣を抜き、周囲を掌握する立ち位置に立っている。

「ここは大丈夫です」
「我々、王国騎士団が処理します」

その言葉を合図にしたかのように、どこから現れたのか、騎士団員たちが一斉に動き出した。

数が多い。
しかも無駄がない。

宝石を狙い、迷いなく破壊。
暴走しかけた者を素早く制圧し、命を奪わないよう細心の注意を払っている。

――さすが、王国騎士団。
統制が取れている。
まるで、この事態を最初から想定していたかのように。

次々と事態は収束していき、混乱は急速に抑え込まれていった。

私はその様子を一瞬だけ確認し、レイさんの背中を追う。

「お嬢様は……?」

問いかけると、レイさんは歩みを止めずに答えた。

「ご無事です。殿下と一緒に、すでに館の外へ」

胸に溜まっていた息を、ようやく吐き出すことができた。

ならば、今は――
この夜の“裏側”を知る者として、前に進むしかない。
セナとはぐれてしまったが彼のことだ騎士団の様子をみてからくるだろう。

私は覚悟を決め、レイさんの後に続いた。
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