夜明けが世界を染めるころ
アリスが作ってくれたスープを、もう一口すくう。
湯気と一緒に、やさしい香りが立ちのぼった。
「あの……」
「なんだい?」
「まだ、いるのですか?」
ディランは椅子に腰掛け、頬杖をついたままこちらを見ている。
「うん。きみが食べ終わるまで」
「……食べにくいのですが」
「気にしないでくれ」
「……気になります」
視線を避けようとしても、ディランの瞳は一瞬も逸れない。
「じゃあ、私が食べさせようか」
「結構です」
即答する。
「つれないなあ」
そう言いながらも、ディランは少し楽しそうに微笑う。
そのとき――
「失礼いたします」
扉が静かに開いた。
入ってきたのは執事のユウリだった。
「…………」
部屋に漂う微妙に甘ったるい空気を一瞬で察し、片眉を上げる。
「殿下」
「なんだい、ユウリ」
「朝食中のお嬢様に、視線を向け続けるのはお控えください」
「見守っているだけだよ」
「それを“圧”と申します」
ユウリはため息をつき、ディランの背後へ回る。
「殿下。お嬢様は逃げません」
「……分かっている」
「でしたら、少し距離を」
「近くにいないと、落ち着かないんだ」
あっさり言われて、私がスプーンの手を止める。
「……ディラン」
「ん?」
「そういうことを、さらっと言わないでください」
耳まで赤くなるのを自覚しながら言うと、
ディランは一瞬きょとんとして――
それから、いつものように柔らかく笑った。
「困らせた?」
「……はい」
「それは悪かった」
そう言いながら、席を立つ気配はまったくない。
ユウリは額を押さえた。
「……まったく。」
湯気と一緒に、やさしい香りが立ちのぼった。
「あの……」
「なんだい?」
「まだ、いるのですか?」
ディランは椅子に腰掛け、頬杖をついたままこちらを見ている。
「うん。きみが食べ終わるまで」
「……食べにくいのですが」
「気にしないでくれ」
「……気になります」
視線を避けようとしても、ディランの瞳は一瞬も逸れない。
「じゃあ、私が食べさせようか」
「結構です」
即答する。
「つれないなあ」
そう言いながらも、ディランは少し楽しそうに微笑う。
そのとき――
「失礼いたします」
扉が静かに開いた。
入ってきたのは執事のユウリだった。
「…………」
部屋に漂う微妙に甘ったるい空気を一瞬で察し、片眉を上げる。
「殿下」
「なんだい、ユウリ」
「朝食中のお嬢様に、視線を向け続けるのはお控えください」
「見守っているだけだよ」
「それを“圧”と申します」
ユウリはため息をつき、ディランの背後へ回る。
「殿下。お嬢様は逃げません」
「……分かっている」
「でしたら、少し距離を」
「近くにいないと、落ち着かないんだ」
あっさり言われて、私がスプーンの手を止める。
「……ディラン」
「ん?」
「そういうことを、さらっと言わないでください」
耳まで赤くなるのを自覚しながら言うと、
ディランは一瞬きょとんとして――
それから、いつものように柔らかく笑った。
「困らせた?」
「……はい」
「それは悪かった」
そう言いながら、席を立つ気配はまったくない。
ユウリは額を押さえた。
「……まったく。」