夜明けが世界を染めるころ
言われっぱなしも癪に合わない。
立ち止まり、くるっと顔を向ける。

「お父様から直々に任されておりますので、名誉なことです。それでは」
こちらもたっぷりの嫌味を込め、にこりと笑う。その態度に、母は顔を歪めたが、もうこれ以上口を出す気はないらしい。

母は長男マルクにはとても甘い。
マルク本人は経済に全く無頓着で遊んでばかり。父が仕事を任せないのも、一目瞭然だった。

自室に戻り、アリスの肩に手を添える。

「ごめんね、肩、大丈夫?」

「大丈夫です。ただ触れただけです」
そう言って、私の手をそっと下ろすアリス。

「息子の面倒もろくに見れないくせに、お嬢様にケチをつけるとは相変わらずですね。あの下品なドレスと派手な化粧もセンスがないです。扇子をへし折っておけばよかったんですかね」
ふんすふんすと文句を言いながらも、アリスは手際よく私の身支度を整えてくれる。

まあ、母が私を気に入らないのも仕方がない。
それにはもう慣れた。
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