もう一度、好きになってもいいですか?

私の秘密を知っても

バスケの試合から数日。
碧とはあれ以来会っていない。
夕暮れの空がオレンジ色に染まる中、スマホを手に持った私は少し躊躇していた。
碧への気持ちがまだ整理できていない。
碧の悩みを聞いたからこそ、私にできることがあると思って…

気づけば、私の指は自然にインスタの画面をタップしていた。

______

saki._.days
ねえ碧、今度の土曜って空いてる?

 ̄ ̄ ̄

碧から「彼氏いる?」ってDMが来たとき、ちょっと動揺したけど、今は違った。
なんだか、彼と話したい気持ちが溢れていた。

_____

aoiblue._.07
お、空いてるけど…どうしたの?

 ̄ ̄ ̄

返事が来た瞬間、頬が熱くなる。
——笑ってほしいな、って思いながら打った文字だった。
_____

saki._.days
ちょっと話したいことがあって……

 ̄ ̄ ̄
aoiblue._.07
俺も
じゃあさ、カフェとかどう?

 ̄ ̄ ̄

——私の気になってたインスタで話題のカフェ。
偶然じゃなく、必然のようにドキドキして、手が震えそうだった。
…そんなの自惚れだろうけど。

_____

saki._.days
やった!楽しみだな😊

aoiblue._.07
俺も楽しみ!
じゃあ、今度の土曜日カフェに10時集合な!

 ̄ ̄ ̄
そのやり取りだけで、心がぽかぽかする。
文字だけなのに、まるで目の前で笑ってくれているようで。
   ーーーーーーーーーーーーーーーーー


…デート当日
 週末の午後、街の小さなカフェに差し込む柔らかい日差し。
 窓際の席に座る私たち。
カフェの光が二人を優しく包む。


「このカフェ、落ち着くね」


 私がぽつりと言うと、碧はにこっと笑う。


「だろ? こういう雰囲気、俺も好きなんだ」


 目の前に並んだカプチーノとフルーツタルト。
手元に置かれた碧の手は、私の手の届く距離にあった。
 胸がぎゅっと熱くなる。


「美咲…」


 碧が小さく呼ぶ。
 振り返ると、目を細めて笑う彼。
 少し照れくさそうで、でもその笑顔に心がほどける。


「ねえ、こないだの試合…見つけてくれたんだね」


 自然に聞いてしまう。


「うん。やっぱり美咲には見てほしいって思ったから」


 真っ直ぐに私を見る目。胸の奥がぎゅっとなる。
 カフェの空気は柔らかく、周りの音は遠くに消えて、二人だけの世界になったようだった。


「碧って、真剣な顔もできるんだね」


 思わず笑うと、彼も少し笑って目を細める。


「俺のこと、なんだと思ってるんだよ」


 その言葉にクスッと笑ってしまう。
 ケーキを分け合って、甘い時間。
 気づけば、お互いに笑顔が増えていく。


「…こうやって、一緒にいるだけで楽しいな」


 私が小さくつぶやくと、碧は手を少し伸ばして私の手にそっと触れる。


「俺も…」


 指先が触れ合った瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなる。
 甘くて、ちょっと切ない、二人だけの時間。


「今日は、碧のこと色々聞きたくて。」


「うん」


あの無邪気なムードメーカーの顔と、真剣な目のギャップに、心臓が跳ねる。


「もちろん」

そう言って笑う碧は、少し影って見えた。

カフェの香りに混ざる甘いケーキとコーヒーの匂い。
窓から入る光が二人を優しく包む。
不思議とドキドキして、思わず手をぎゅっと握る。


「この前の…あの話のこと、聞いていい?」


碧が戸惑いながらも頷いてくれる。


「…うん」

私の声に碧はちょっと困ったに笑い、でもすぐ真剣な顔に戻る。


「……美咲にだけは、全部見せたかった。
 俺の弱さも、家のことも、夢のことも…全部。」


胸の奥に熱いものが込み上げてくる。
——私に、ほんとうの心を見せてくれるんだ。


「私もね、碧のこと全部知りたい。
今じゃなくても、いつか。」


「……美咲」


呼ばれただけで、心臓が跳ねる。
ほんの一瞬、手が触れただけでドキドキが止まらない。


「ねぇ、碧。
私……碧のバスケ頑張ってる姿、すきだよ。
すごく、かっこいいって思ってる。」


その一言に、碧の目が少し潤む。


「……そっか。ありがとう、美咲」


沈黙の時間も、互いの呼吸で満たされて、甘く、少し切ない。
私の手を握ったまま、碧もそっと手を重ねてくる。


「…ごめん。今日は話せない。
でも、絶対話すから。美咲には話すから」


「うん……私も、話す。絶対に」


その声に、胸がいっぱいになる。

——今日だけじゃなく、これからの時間も、二人で歩いていける気がした。

カフェの外に出ると、柔らかい夕陽が地面を照らしていた。

手をつなぐ二人の影が、少しずつ長く伸びて、夕焼けに溶けていく。


「じゃあ、また来週?」


「うん、絶対」


笑いながら別れた瞬間、心の奥で静かに約束をした。

いつか、絶対、私のことも話すって。
今日みたいにはぐらかさないで、包み隠さず話すって。

…だって、碧に隠し事はしたくないから。
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