もう一度、好きになってもいいですか?

電気を消した部屋は、月明かりだけが差し込んでいた。

 布団を並べたはずなのに、妙に距離が近く感じる。

 心臓の音がうるさくて、眠れそうになかった。

 向こう側では、心葉が小さな声で「……おやすみ」と言い、悠翔が「おう」と短く返していた。

 その後、布団の中で手を繋いだらしい気配がして、心葉が「っ……!」と息を呑むのが聞こえた。

 まだ、恋人らしいことに慣れてないのか、初々しさがのぞいている。

美咲は思わず布団を頭までかぶった。

(……こっちまでドキドキするんだけど……!)

***

「なあ、美咲」

 小さな声がすぐ隣から聞こえる。
 布団の隙間からのぞくと、碧が横を向いてじっとこちらを見ていた。


「起きてるんだろ?」

「……寝てる」

「嘘つけ。目合った」


 笑いをこらえきれず、二人で小さく声を漏らす。
 笑ったあとは、なぜか言葉を探してしまう沈黙が落ちた。


「……美咲、今日楽しそうだったな」

「うん。すごく楽しかった」

「そうか。……俺も」


 碧は少し言い淀んで、視線を外さずに続けた。


「でも、一番楽しかったのは、美咲が隣にいたことかな」


 ドクン、と胸が跳ねた。
 碧の声は冗談じゃなくて、真剣そのものだった。


「な、なにそれ……」

「なんでもない。ただの本音」


 そう言って、碧は布団の中でそっと手を伸ばしてきた。

 指先が触れるか触れないかの距離で止まっている。

 握ってもいい、でも逃げてもいい。
そんな優しさを含んだ距離感だった。

 美咲は迷いながらも、そっと自分の手を重ねた。

 指先が触れ合った瞬間、胸の奥までじんわりと熱が広がる。


「……あったかい」

「だろ?」


 碧が小さく笑って、指を絡めてきた。
 その穏やかさに、怖さよりも安心の方が大きくなる。


「美咲」

「ん……?」

「俺さ、こうやってみんなで泊まるの初めてだけど……今が特別だって思ってる。美咲がいるから」


 その言葉に、心臓が一気に熱くなる。

 “好き”って言葉じゃないのに、それ以上の想いが伝わってくる。


「……ずるいよ」

「ずるい?」

「そんなこと言われたら、眠れなくなる」

「じゃあ、眠れなくていい」


 暗闇の中で微笑んだ碧が、ぎゅっと指を強く絡めてきた。

 繋いだ手の温もりを感じながら、胸が甘く締めつけられていく。


——この夜のことは、きっと一生忘れない。


 お泊まり会はただの遊びじゃなく、私にとって恋の扉をノックするような、そんな感じがした。
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