ベッドの隣は、昨日と違う人
独白〜みいなを泊めたあの日〜






そういえば、あの時……
初めてみいなをうちに泊めたっけ。
なんもなかったけど。
いや、なんもしなかった、できるわけなかったけどな。


──三年前。


おい、自分から誘っちまった。

電車が止まってるからって……
みいなが、今から家に来る。

……まじか。

友達だ。
ずっと。

高校の頃から、気づけば横にいたやつで。
一緒に笑って、愚痴言って、何でもない夜を何十回も過ごしてきた。

この日だって、失恋話を聞かされて……
そんなことは、今までにも何度もあった。
話し込んで、居酒屋で始発まで飲んだこともある。
カラオケで、二人きりでオールした夜もある。

――それでも。

二人っきりで泊まるのは、初めてだ。


たまたま昨日、掃除しててよかった。
ベッドカバーも変えててよかった。

は?
ベッドカバー?
何言ってんだ、俺。
今日……なんか、起きんのか?

いや、ない。
あるわけないだろ。

みいなだぞ。
軽い気持ちでどうこうしていい相手じゃない。

……可愛いけど。

それは、昔から思ってた。
笑うときの目とか、ちょっと困った顔とか。
さらさらの髪とか。
でも、それは“恋”じゃない。
少なくとも、俺はそう思い込んできた。

なのに。

二人っきりで、夜で、家で――
それだけで、頭の奥がざわつく。

……俺、我慢できんのか?

いやいやいや。
ダメだろ。
何考えてんだ。

みいなとは、これからも友達でいたい。


決めた。
ベッドカバー変えたんなら、みいなにベッドで寝てもらおう。
俺はソファで寝る。

覗かない。
触れない。
距離を詰めない。

よし。
今日は“いい友達”として完璧にやり切る。

玄関の音。

「大地?」

その声だけで、心臓が一回、変な鳴り方をした。

「どうしたの?顔、怖いよ?」

……やば。
そんな顔してたか。

「いや、なんでもない……」

慌てて目を逸らす。

「部屋、たまたま掃除しといてよかったなーって思っただけ」

嘘じゃない。
でも本当は、そんなことどうでもよくて。

今、ここにみいながいること。
それだけで、空気が少し違って感じる。

……落ち着け、俺。

今日は何もしない。
何も始めない。

そう決めたはずなのに、
心臓だけが、言うことを聞いてなかった。





これ、今思えば、俺はこの頃からみいなのこと特別に思ってなかったか?

気づかなかった……、
いや、
壊したくなくて、
気づかないふりをずっとしていただけかもしれない。





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