ベッドの隣は、昨日と違う人
独白〜二次会の日〜
そして二次会の日。
わざわざ前日に髪を切りに行って、セットの仕方まで教えてもらった。
メガネもやめて、久しぶりにコンタクトにして、スーツに合うか何度も鏡を見た。
……たぶん、悪くない。はず。
みいなに、恥をかかせるわけにはいかない。
それだけは、ずっと頭にあった。
夕方になっても落ち着かなくて、気づけばスマホを触っていた。
思い切って連絡すると、みいなはもう会場近くのカフェにいるらしい。
少し早いけど、合流することにした。
店に入った瞬間、視界に入ったみいなを見て、正直、息を呑んだ。
髪は綺麗に編み込まれていて、
大人っぽいドレスワンピースを着ている。
……可愛い。
なんだよ、これ。
今まで、こんなみいな見たことない。
頭の中が一瞬で追いつかなくて、
変な間ができた気がした。
そんな俺を見て、みいなが言った。
「めちゃくちゃ……かっこいい」
心臓が一気にうるさくなる。
照れるだろ、って冗談っぽく返したけど、
内心は完全に舞い上がっていた。
スーツ買ってよかった。
髪も切ってよかった。
でも――
みいなを「可愛い」って言うことは、結局できなかった。
言えばいいだけなのに。
喉まで出かかってるのに。
そのくせ、視線だけはどうしても逸らせなかった。
二次会が始まって、俺たちは会場の奥のほうの席についた。
途中で仕事の連絡が入って、
ビュッフェはみいなに一人で行ってもらった。
戻ってきたとき――
なんとなく、様子が違った。
聞けば、例のあいつが来ていたらしい。
しかも、彼女と一緒に。
……はぁ。
やっぱり、か。
この場所にいること自体は、少し意外だった。
でも、隣に誰かいるだろうとは思っていた。
ただ――
それが、あいつか。
あの日、みいなと飲んでいた時、誘ってきた男。
どんな人間かなんて、知る必要はなかったはずなのに。
……今日、知ってしまった。
あいつが、みいなと。
何度もみいなを――。
だめだ。
考えるな。
拳に、無意識に力が入る。
事実はひとつだ。
あいつは、
俺の知らないみいなを知っている男だ。
……これは、嫉妬だな。
見なきゃよかった。
いや、見てしまった以上、もう戻れない。
俺は目の前のみいなに気づかれないよう、
これ以上余計なことを考えないように、
ただ表情だけを保った。
みいなが、思ったより平気そうだったこと。
それだけが、今の俺の救いだった。
ちょうどその頃、ビンゴ大会が始まって、
みいながやたら張り切ってカードを握りしめていた。
「当てるから、見てて」
その無邪気な声に、
俺はただ、平静を装って頷いた。
みいなの顔を見ていると、
なぜか本当に当たる気がした。
まじか。
本当に、みいなが一等を当てた。
名前を呼ばれて、
ステージに向かう背中を、俺は少し呆然と見送った。
「誰と行きますか?」
司会の声に、みいなは一瞬、言葉に詰まった。
その間を埋めるみたいに、
新婦がマイクを取った。
「大地くんと一緒に行ってほしいでーす!」
会場が一瞬ざわついて、
すぐに笑いと拍手が起きる。
「いいですよね?」
そう言われて、
視線が一斉に俺に集まった。
……なんだこの状況。
逃げ場もないし、
逃げたいとも思わなかった。
「は、はい」
短く返事すると、
今度は冷やかしと祝福が入り混じった声が飛んでくる。
「おー!」
「いいなー!」
「温泉とか最高じゃん!」
俺は照れくさくて、
とりあえず周りに頭を下げた。
……なんてことだ。
みいなと、二人で、温泉旅行。
どうするんだ、これ。
いや、どうするも何も……。
胸の奥で、じわっと込み上げるものがあった。
……あぁ、でも。
正直に言うと。
嬉しい。
二次会の帰りのことだ。
帰り際、みいなが
あいつとトイレの前で、もう一度話したらしい。
「また会える?」って聞かれて――
みいなは、はっきり言ったって。
もう会えない。
もう、流されない。
自分で選ぶ。
そう伝えた、って。
それを聞いた瞬間、
胸の奥で、ぱちん、と何かが弾けた。
……めちゃくちゃ、嬉しかった。
あいつと切れて、嬉しいなんて。
我ながら、独占欲がひどい。
でももう、
友達のままなんて無理だ。
そう、伝えた。
みいなは、急に焦った顔をした。
勘違いだ、って思うかもしれない。
でも、
俺ともう会えなくなるのは嫌だ、って顔だった。
それが、嬉しくて。
同時に、こっちも焦った。
嬉しくて、怖くて。
でも――
俺は、引く気はない。
そう伝えたら、
ちゃんと、伝わった気がした。
もう、自分の気持ちをごまかせない。
好きだ。
みいな。
好きだ。
……でも。
この言葉を伝えるには、
まだ、少しだけ早い。
ふたりきりの、温泉旅行。
そこで、
何かが変わる。
そんな予感がしている。
―――
サイドストーリー、いかがでしたか?
本編と並行した大地の裏側。
本編と大地独白は共に二次会終了まで描きました。
次回からには本編に戻り、"二次会から数日後のふたり"を描いた第八章に入ります。
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そして二次会の日。
わざわざ前日に髪を切りに行って、セットの仕方まで教えてもらった。
メガネもやめて、久しぶりにコンタクトにして、スーツに合うか何度も鏡を見た。
……たぶん、悪くない。はず。
みいなに、恥をかかせるわけにはいかない。
それだけは、ずっと頭にあった。
夕方になっても落ち着かなくて、気づけばスマホを触っていた。
思い切って連絡すると、みいなはもう会場近くのカフェにいるらしい。
少し早いけど、合流することにした。
店に入った瞬間、視界に入ったみいなを見て、正直、息を呑んだ。
髪は綺麗に編み込まれていて、
大人っぽいドレスワンピースを着ている。
……可愛い。
なんだよ、これ。
今まで、こんなみいな見たことない。
頭の中が一瞬で追いつかなくて、
変な間ができた気がした。
そんな俺を見て、みいなが言った。
「めちゃくちゃ……かっこいい」
心臓が一気にうるさくなる。
照れるだろ、って冗談っぽく返したけど、
内心は完全に舞い上がっていた。
スーツ買ってよかった。
髪も切ってよかった。
でも――
みいなを「可愛い」って言うことは、結局できなかった。
言えばいいだけなのに。
喉まで出かかってるのに。
そのくせ、視線だけはどうしても逸らせなかった。
二次会が始まって、俺たちは会場の奥のほうの席についた。
途中で仕事の連絡が入って、
ビュッフェはみいなに一人で行ってもらった。
戻ってきたとき――
なんとなく、様子が違った。
聞けば、例のあいつが来ていたらしい。
しかも、彼女と一緒に。
……はぁ。
やっぱり、か。
この場所にいること自体は、少し意外だった。
でも、隣に誰かいるだろうとは思っていた。
ただ――
それが、あいつか。
あの日、みいなと飲んでいた時、誘ってきた男。
どんな人間かなんて、知る必要はなかったはずなのに。
……今日、知ってしまった。
あいつが、みいなと。
何度もみいなを――。
だめだ。
考えるな。
拳に、無意識に力が入る。
事実はひとつだ。
あいつは、
俺の知らないみいなを知っている男だ。
……これは、嫉妬だな。
見なきゃよかった。
いや、見てしまった以上、もう戻れない。
俺は目の前のみいなに気づかれないよう、
これ以上余計なことを考えないように、
ただ表情だけを保った。
みいなが、思ったより平気そうだったこと。
それだけが、今の俺の救いだった。
ちょうどその頃、ビンゴ大会が始まって、
みいながやたら張り切ってカードを握りしめていた。
「当てるから、見てて」
その無邪気な声に、
俺はただ、平静を装って頷いた。
みいなの顔を見ていると、
なぜか本当に当たる気がした。
まじか。
本当に、みいなが一等を当てた。
名前を呼ばれて、
ステージに向かう背中を、俺は少し呆然と見送った。
「誰と行きますか?」
司会の声に、みいなは一瞬、言葉に詰まった。
その間を埋めるみたいに、
新婦がマイクを取った。
「大地くんと一緒に行ってほしいでーす!」
会場が一瞬ざわついて、
すぐに笑いと拍手が起きる。
「いいですよね?」
そう言われて、
視線が一斉に俺に集まった。
……なんだこの状況。
逃げ場もないし、
逃げたいとも思わなかった。
「は、はい」
短く返事すると、
今度は冷やかしと祝福が入り混じった声が飛んでくる。
「おー!」
「いいなー!」
「温泉とか最高じゃん!」
俺は照れくさくて、
とりあえず周りに頭を下げた。
……なんてことだ。
みいなと、二人で、温泉旅行。
どうするんだ、これ。
いや、どうするも何も……。
胸の奥で、じわっと込み上げるものがあった。
……あぁ、でも。
正直に言うと。
嬉しい。
二次会の帰りのことだ。
帰り際、みいなが
あいつとトイレの前で、もう一度話したらしい。
「また会える?」って聞かれて――
みいなは、はっきり言ったって。
もう会えない。
もう、流されない。
自分で選ぶ。
そう伝えた、って。
それを聞いた瞬間、
胸の奥で、ぱちん、と何かが弾けた。
……めちゃくちゃ、嬉しかった。
あいつと切れて、嬉しいなんて。
我ながら、独占欲がひどい。
でももう、
友達のままなんて無理だ。
そう、伝えた。
みいなは、急に焦った顔をした。
勘違いだ、って思うかもしれない。
でも、
俺ともう会えなくなるのは嫌だ、って顔だった。
それが、嬉しくて。
同時に、こっちも焦った。
嬉しくて、怖くて。
でも――
俺は、引く気はない。
そう伝えたら、
ちゃんと、伝わった気がした。
もう、自分の気持ちをごまかせない。
好きだ。
みいな。
好きだ。
……でも。
この言葉を伝えるには、
まだ、少しだけ早い。
ふたりきりの、温泉旅行。
そこで、
何かが変わる。
そんな予感がしている。
―――
サイドストーリー、いかがでしたか?
本編と並行した大地の裏側。
本編と大地独白は共に二次会終了まで描きました。
次回からには本編に戻り、"二次会から数日後のふたり"を描いた第八章に入ります。
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