片恋はおわらせるつもりだったのに、強引に囲い込まれて愛されています!?
「このままでいいんでしょう? だって、なにも行動しないのだから」

 唇を強く強く噛んだ。口の中に血の味が広がって、不快だ。けど、言い返せない。

 うつむいて耐える私に、姉はなにを思ったのだろうか。突然立ち上がった。

「あなたと話していても、疲れるわ。私は帰る」

 くるりと身をひるがえし、姉は私に背中を向けた。一歩を踏み出して、思い出したように振り返って私を見る。

 瞳に意地悪な色が宿っている。唇の端をあげた姉は私に向かって言葉を吐き捨てる。

「後悔したくないなら、行動しなさい。偶然を装って押し倒しでもしたら、彼の気持ちもわかるんじゃなぁい?」

 私がそんなことできないと分かっているくせに――!

 胸の中で怒りの感情が膨れ上がっても、顔には出ない。不思議だ。同じ親から生まれたのに、ここまで違うなんて。

「じゃあね、イリュア。――きちんと、自分の気持ちにけじめをつけなさい」

 言葉を残し、姉は本当に立ち去ってしまった。

 残された私はぼうっとする。紅茶の水面をじっと見つめて、考えた。

(お姉さまは私にできっこないことを言っているわ。無理難題を押し付けている)

 そもそも、告白一つできない私に押し倒す勇気なんてあるはずもない。

 考えはせわしなくぐるぐると回って、いっそ真っ白になってくれたほうがまだましだ。

「お姉さまみたいにきちんと伝えることができたら、苦労していないわ」

 ぽつりとつぶやいた。水面に映った私の表情は、先ほどから一つも変化していなかった。
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