片恋はおわらせるつもりだったのに、強引に囲い込まれて愛されています!?
 おかしなことじゃない。アルスさまは将来有望な騎士だし、彼を後釜に――と騎士団長が考えてもおかしくはない。もちろん、娘の結婚相手にというのも納得できる話だ。

 だって、アルスさまは素敵な人だから。

「結婚したら次期騎士団長の地位はほぼ確定でしょ? 将来を約束してもらうみたいなものじゃん」

 こぶしを握った。

「まぁ、あのお方が素晴らしい人だっていうのは知ってるし、幸せになってほしいのは認めるけど……」
「それに、騎士団長さまの娘さんって、すごい美人なんだって! アルスさまと並ぶと絶対にお似合い!」

 どこかうっとりしたような声で紡がれた言葉に、私の胸は張り裂けそうな痛みを覚えた。

 お似合い。私とアルスさまが並んでも、もらえることはない評価。

「……って、アルスさまがその方と婚約されたら、アルスさまはここに来られなくなるよね?」
「目の保養だったのにねぇ。ま、仕方がないことでしょ」

 言葉のすぐ後に、鐘の音が鳴る。仕事の交代を示す音ということもあり、メイドたちは慌てて場を立ち去った。

 残ったのは呆然と立ち尽くす私一人。

「そっか、アルスさまにも縁談があるんだ」

 考えてみたら当然のことだ。今まで彼に相手がいなかったことのほうが奇跡なのだから。

 もう、いい加減目を覚ますべきなのかもしれない。心地いい夢を見続けるのも、おしまいにしたほうがいいんだろう。

(お姉さまの言う通りだったわ)

 うじうじとしていたら、だれかに奪われてしまう。

 アルスさまは私のものじゃない。しかし、心は正直だった。

 ――アルスさまを私から奪わないでほしい。

 心が叫ぶ。これが、彼の迷惑になるとわかっているのに。
< 17 / 20 >

この作品をシェア

pagetop