片恋はおわらせるつもりだったのに、強引に囲い込まれて愛されています!?
 穏やかな表情に私の心臓が大きく音を鳴らした。高鳴る鼓動は気のせいじゃない。

(なんだろう、この感情――)

 こんな感情、今まで知らなかった。

「ごめん、名乗ってなかったね。俺はアルス・サージェントっていうんだ」
「アルスさま……」

 知ったばかりの名前を口に出す。それはまるで口に馴染ませ、忘れないようにしているみたいだった。

「よかったら、キミの名前も教えてくれない?」
「あ、な、名乗らずに申し訳ございません――!」

 慌てて立ち上がって、ドレスの端をちょんとつまむ。家庭教師から教えてもらった礼を披露して、口を開く。

「私はイリュア・スウェイトと申します。スウェイト子爵家の次女でございます……!」

 スウェイト子爵家は家格こそ低いが、歴史のあるおうち。名門貴族の一覧にも、名前が載ると耳にしている。

 ……もちろん、最後のほうだけど。
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