片恋はおわらせるつもりだったのに、強引に囲い込まれて愛されています!?
「有名なおうちだね」
「いえ、アルスさまのほうが」

 サージェント家は伯爵家だ。家格も歴史も申し分なく、うちなんて足元にも及ばない。

 スウェイト家は爵位こそ一つ下だけど、伯爵家と子爵家の間には越えられない壁がある。ここで線引きされることも少なくない。

「サージェント家は伯爵家です。その、うちとは比べ物にならなくて……」

 言葉を探して、必死に伝える。

 どうしてだろう。アルスさまになら、自分の考えや気持ちを打ち明けることができた。

 ほかの人には怖くて言えなかったのに……。

「家名を聞いただけで、爵位がわかるの?」
「すべて暗記しているかと言われると、微妙ですが」
「それでもすごいよ。俺はそういうのさっぱりだから」

 アルスさまはあっけらかんと笑う。その笑みに悲観は見えない。

「俺は机に向かうより、身体を動かすほうが好きなんだ。両親や家庭教師たちは嘆くけど、俺は気にしてない」
「……そうなのですか?」
「俺には双子の弟がいて、そっちが家督を継ぐ可能性も全然あるし」

 基本的に貴族のおうちは長男が家を継ぐ。娘しかいなかった場合、長女が婿を取るのが常だ。

 しかし、男の子の双子の場合は話が別。どちらが家を継ぐのか、話し合って決めるらしい。いつしか本で読んだことがある。

「あいつがいて本当によかったよ。そもそも俺、貴族なんて向いてないし」
「そんなこと、ないと思いますが」
「ううん、貴族特有の腹の探り合いとか、苦手なんだ」

 肩をすくめ、彼は笑う。
< 7 / 17 >

この作品をシェア

pagetop