片恋はおわらせるつもりだったのに、強引に囲い込まれて愛されています!?
「だから、俺は家督を継がずに騎士になりたいって思ってるんだ」

 空を見上げたアルスさまの瞳は美しかった。澄み切っていて、どこまでも広がる空みたいだ。

 彼は自分の立場を理解していて、それでもその中から自分にも向いていることを探している。

 私みたいに、うつむいて悲観してばかりじゃない。

「――と、自分語りみたいになっちゃってごめんね。つまらなかったよね」
「ぜ、全然! むしろ、勇気が出たと言いますか……」
「勇気?」

 彼の言葉にはっとして、慌てて手で口をふさいだ。

 私の視線が泳ぐ。どうにか、ごまかされてくれないだろうか。

「それって、どういうことか教えてくれる?」

 今度の笑顔には圧があった。別の意味で心臓が大きく音を立てる。

 しばらく見つめ合って、先に折れたのは私だった。口元から手を離して、言葉を探すために視線をさまよわせる。

「その、私も悲観してばかりじゃダメだって、思いました」

 それから、私はつっかえつつも感じたことを話した。

 私もアルスさまみたいになりたい。嘘偽りのない本当の気持ち。

 話を聞き終えたアルスさまは、なぜか私の手を取った。驚きすぎて、瞬きを繰り返す。

「俺がキミの勇気になれたなら、嬉しい。ねぇ、これからも交流しようよ」

 手を握られる。同年代の男の子に手を握られたことがない私は、混乱していた。それこそ、彼の話に集中できないくらい。

「イリュア?」
「わ、私で、よかったら!」

 慌てて返事をする。上ずった声は変じゃなかっただろうか。

 不安でいっぱいの私だけど、アルスさまは優しいまなざしを向けてくれた。

「ありがとう。これで俺たちは友だちだ」

 ずっと、寂しかった。周りが話に花を咲かせていても、私は混ざることができなかった。

 さみしくてみじめで、この場所が大嫌いだった。

 けど――。

(私にも友だちができたんだ……!)

 これで、私は一人じゃない。私は参加し始めてからはじめて、このお茶会の場に感謝した。

 アルスさまに出逢わせてくれて、ありがとう――って。
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