君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 唇の端がわずかに震えているのを、晴菜は見逃さなかった。胸の奥に溜まっていたものが、一気にほどけたような表情だった。
 その表情に、晴菜の胸の奥がじわりと熱くなる。ただ名前を呼んだだけなのに、こんなにも意識してしまうなんて思わなかった。
 気恥ずかしさを隠すように、晴菜は視線を彷徨わせる。

「その……探しました」
「だろうな」

 ゆっくりとこちらへ歩いてくる奏汰が、少し先の道路を指で示す。

「あそこが夜間工事らしくてな。その先、停められそうな感じじゃねぇから一本裏に回って、ここで待ってた」

 いつもの場所にいなかった理由は拍子抜けするほど現実的で、それがより一層奏汰らしさを感じさせた。
 夜の闇に紛れた二人の距離が、緩やかに縮まっていく。

「連絡、なかったから」
「悪い。頭が追いついてなかった」

 手が届く距離まで歩いてきた奏汰が、堪えきれなかったように晴菜を強く抱きしめた。突然の力に、息が詰まる。

「っ」
「連絡、できなくて悪かった」
「……ううん」

 ワイシャツ越しでもわかる張り詰めた身体。首筋に当たる彼の吐息は熱く、湿っていた。
 抱きしめられているというより、奏汰が晴菜を支えにして立っているようだった。背中に回された腕が、微かに震えていることに気づく。
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