君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
「母は外堀を埋めるのが得意なんです。すでに親族や取引先には、婚約が内定しているかのように吹聴して回っています。このままでは、彼も私も、家の都合で塗り潰されてしまう」
「……」
「私が言っても、母は聞きません。『若さゆえの迷い』で片付けられてしまう。彼もかなり反発していて、それであちらの社長さんが取り持つ形での食事会が決まりました。両家が揃うその食事会の場で、母に逃げ場のない真実を突きつける必要があります」

 穂乃果はそう言って、晴菜をまっすぐに見据えた。その瞳には、自らの人生を掴み取ろうとする熾火のような熱が宿っていた。

「高坂と氷室。両家の話し合いの場に、あなたも出席してほしいの。彼を愛しているのでしょう? 私と一緒に戦ってくれませんか」

 頼るというより、共闘を持ちかける眼差しだった。喉の奥が熱く、胃がせり上がってくるような圧迫感に襲われる。

「……お待たせしました」

 ようやく絞り出した声とともに、晴菜はグラスを差し出す。微かなオレンジの香りが、二人の間の張り詰めた空気を一瞬だけ和らげた。

「ありがとう。お返事は彼を経由してもらえると嬉しいわ。それでは」
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