君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
盆前特有の、むっとするような熱気が部屋の壁にまとわりついていた。昼間に溜め込んだ熱が夜になっても逃げ場を失い、部屋全体をじわじわと蒸しているようだった。
奏汰は自宅のリビングで山積みの書類と向き合っていた。以前は奏汰も酒蔵に隣接する実家に両親とともに住んでいた。事務所にも出入りしやすく、仕事もしやすかったが、四年前に隆之が結婚し妻と同居を始め実家が手狭になったため、奏汰が一人暮らしをする形で実家を出た。
柔らかいはずの電球色が、書類に刻まれた数字と判子の朱を生々しく浮かび上がらせる。現実と理想、それらが混ざり合い、頭の奥を鈍く痺れさせていた。
『俺は社長だ。氷室酒造を百年先まで残す責任がある。感情で選択して、蔵を潰すわけにはいかない』
不意に、関東から戻った日の夜の、隆之の声が脳裏に蘇る。
あの日も、今夜のようにひどくじっとりとした空気が肌に纏わりつく夜だった。応接室のカーテンを閉めた窓の向こうで鳴く蝉の声だけが、間延びしたように響いていた。
『伝統っていうのは、形を変えながら生き残る執念のことだと、俺は思っている』
『執念? それですべてが守れるって? 時東の資本を入れれば、うちの経営方針にまであの人が口を出してくるのは目に見えてんだろ』
奏汰は自宅のリビングで山積みの書類と向き合っていた。以前は奏汰も酒蔵に隣接する実家に両親とともに住んでいた。事務所にも出入りしやすく、仕事もしやすかったが、四年前に隆之が結婚し妻と同居を始め実家が手狭になったため、奏汰が一人暮らしをする形で実家を出た。
柔らかいはずの電球色が、書類に刻まれた数字と判子の朱を生々しく浮かび上がらせる。現実と理想、それらが混ざり合い、頭の奥を鈍く痺れさせていた。
『俺は社長だ。氷室酒造を百年先まで残す責任がある。感情で選択して、蔵を潰すわけにはいかない』
不意に、関東から戻った日の夜の、隆之の声が脳裏に蘇る。
あの日も、今夜のようにひどくじっとりとした空気が肌に纏わりつく夜だった。応接室のカーテンを閉めた窓の向こうで鳴く蝉の声だけが、間延びしたように響いていた。
『伝統っていうのは、形を変えながら生き残る執念のことだと、俺は思っている』
『執念? それですべてが守れるって? 時東の資本を入れれば、うちの経営方針にまであの人が口を出してくるのは目に見えてんだろ』