君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 選ばなかったくせに、選ばれなかった未来を想像して傷つくなんて――本当に、ばかみたいだ。
 忘れたいのに、忘れられない。離れたはずなのに、心だけがまだ彼のそばに取り残されていた。
 流れ出る涙を堪えきれず鼻をすすると、不意に甲高いインターホンの音が鳴り響いた。思考より先に身体が強張る。
 ゆっくりと時計を見遣ると、始発が動き出して一時間ほどといった頃合いだ。こんな時間に訪ねてくる人間は――一人しかいない。

「う、そ」

 跳ね上がる心臓を抑えながら、晴菜は震える足を必死に動かした。ふらつきながらリビングの壁に近づき、恐る恐るモニターを確認する。
 そこに映った彼の顔を見た瞬間、息が止まる。

「……なんで……」

 乱れた髪をそのままに、肩で息をしている奏汰がそこにいた。オートロックの向こうで、彼は真っ直ぐにレンズを見据えている。
 頭が、うまく回らない。幻覚じゃないかと、目をこすりたくなる。これは徹夜明けの脳が見せる、タチの悪い白昼夢だ。そう思わなければ、この場に立っていられなかった。
 昨夜、あんな言葉を送った。突き放した。終わらせたつもりだった。
 なのに。
 どうして――京都に戻ったはずの、奏汰が。
 目の前のモニターに、映っているのだろう。
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