君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 「どうして……ここにいるの……」

 誰に向けた言葉かも分からないまま、唇がかすかに動く。
 このままモニターを消して、見なかったことにすればいい。居留守を使えばいい。そうすれば、また元の静かな朝に戻れる。
 今抱えている痛みも、悲しみも。時間が経てば鈍るはずだ。鎌倉で呑んだシングルモルトのように――きっと、海の味に変わるだけ。
 そう心の中で呟いた瞬間、インターホンが再び鳴り響いた。一度目よりも、少しだけ強い音のように感じた。

「……あ……」

 逃げ場を塞ぐように重ねられる三度目のインターホンの音が、鼓膜を直接叩く。
 心臓の鼓動がうるさくて、自分の呼吸の音すら分からない。
 開けてしまえば終わりだ。後戻りなんて、できない。
 それでも――このまま無視して、一生後悔しない自信もなかった。
 晴菜は唇を噛みしめ、震える指先でインターホンの通話ボタンに触れた。
< 128 / 141 >

この作品をシェア

pagetop