君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
『開けろ。泣いてるやつをそんままにして帰れるほど俺は器用じゃねぇ』
「無理。……帰って」

 これ以上奏汰の視線に囚われぬよう、モニターから視線を逸らしながら、晴菜は言葉を絞り出した。吐き出した拒絶とは裏腹に、喉がひどく震えた。

『なら、ここで話す。いいな』

 奏汰の言葉に、晴菜はのろのろと視線を戻した。モニターに映る彼は、固く結んだ唇と鋭い眼差しを崩さない。
 ここは都内の住宅街にある、ごく普通のマンションだ。早朝の静まり返ったエントランスで押し問答を続けていれば、騒ぎになってしまう。
 晴菜は思わずモニターに縋りつくように、声を上げた。

「や、めて。近所迷惑になる」
『じゃあ開けろ。今ここで開けなかったら、俺は何度でも来てやる。あんたに会えるまで、何度でも』

 力強く言い切られ、晴菜は言葉を失ってしまう。
 この人は、本当にそうする。これまでの付き合いで、それだけは嫌というほど分かっていた。ここで拒み続けても時間と痛みが長引くだけだ。
 喉の奥が、ひくりと痙攣する。

「……卑怯」

 絞り出した声は、抗議というより白旗に近かった。

『知ってる』

 モニターに映る奏汰は、ほんの少しだけ眉根を下げていた。
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