君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
二人はほとんど言葉を交わさず、カウンター席を立った。心地よいジャズの残響が背中にまとわりつくように追いかけてくる。
エレベーターホールに向かう廊下は、絨毯が厚すぎて足音すら吸い込まれる。男が先に歩き、晴菜はその半歩後ろを歩いた。距離は近くて、けれど触れてはいけないような、奇妙な緊張が漂っている。
不意に、彼が腕にかけたジャケットのポケットからスマホを取り出した。ディスプレイの青白い光が整った横顔を妖しく照らしていた。
「悪い、ちょっと野暮用」
そう短く告げて、彼はサッと指を滑らせた。メール画面を開き、誰かに向けて短い文面を打ち込んでいる。送信音が小さく鳴った瞬間、男はすぐにディスプレイをロックし、ポケットに戻した。そうして、まるでそんなやりとりなどなかったかのように、晴菜を振り返りもせずエレベーターのボタンを押す。
エレベーターが到着するまでの間、晴菜はエレベーターの横に掲示されているフロア図をぼうっと眺めた。先ほどのバーがあるこの最上階は、結婚式が執り行われるチャペルと、披露宴として使われるバンケットが併設されているらしい。土日になるとあのバーは二次会に使用され、招待客でいっぱいになるのだろうと簡単に想像できた。
無機質な音を立てて扉が開いた。と同時に、こちらを振り返った男が短く問いかけてくる。
「? どうした?」
「……あ、いえ」
晴菜はハッと我に返り、慌ててエレベーターに乗り込んだ。一階下のボタンを押すと、男はふっと小さく息を吐いた。
扉が閉まり、静かに下降を始める。しんと静まった空間の中で機械の低い唸りと二人の呼吸だけが響く。階数を示す数字がゆっくりと移り変わるのを、晴菜は無言で眺めていた。
ポーン、という軽い音が鳴った。独特の浮遊感とともに、エレベーターが目的のフロアに到着する。ドアが開くと正面の鏡張りの壁に、二人の姿が映った。
エレベーターホールに向かう廊下は、絨毯が厚すぎて足音すら吸い込まれる。男が先に歩き、晴菜はその半歩後ろを歩いた。距離は近くて、けれど触れてはいけないような、奇妙な緊張が漂っている。
不意に、彼が腕にかけたジャケットのポケットからスマホを取り出した。ディスプレイの青白い光が整った横顔を妖しく照らしていた。
「悪い、ちょっと野暮用」
そう短く告げて、彼はサッと指を滑らせた。メール画面を開き、誰かに向けて短い文面を打ち込んでいる。送信音が小さく鳴った瞬間、男はすぐにディスプレイをロックし、ポケットに戻した。そうして、まるでそんなやりとりなどなかったかのように、晴菜を振り返りもせずエレベーターのボタンを押す。
エレベーターが到着するまでの間、晴菜はエレベーターの横に掲示されているフロア図をぼうっと眺めた。先ほどのバーがあるこの最上階は、結婚式が執り行われるチャペルと、披露宴として使われるバンケットが併設されているらしい。土日になるとあのバーは二次会に使用され、招待客でいっぱいになるのだろうと簡単に想像できた。
無機質な音を立てて扉が開いた。と同時に、こちらを振り返った男が短く問いかけてくる。
「? どうした?」
「……あ、いえ」
晴菜はハッと我に返り、慌ててエレベーターに乗り込んだ。一階下のボタンを押すと、男はふっと小さく息を吐いた。
扉が閉まり、静かに下降を始める。しんと静まった空間の中で機械の低い唸りと二人の呼吸だけが響く。階数を示す数字がゆっくりと移り変わるのを、晴菜は無言で眺めていた。
ポーン、という軽い音が鳴った。独特の浮遊感とともに、エレベーターが目的のフロアに到着する。ドアが開くと正面の鏡張りの壁に、二人の姿が映った。