君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 彼が先に足を踏み出したので、晴菜もその後を追った。二人は終始無言だった。廊下は広く、天井が高い。壁には油絵だろうか、抽象的なアートが飾られている。晴菜がチェックインした階とは違う、別世界のような景色だった。
 真っ白なロココ調のデザインのドアを、豪奢な金色のドアノブが彩っている。彼は躊躇いもなくそのドアをカードキーで開いていく。
 ギィと音を立てて開かれた部屋の正面には、大きな一枚窓が張り出していた。ゆったりとした白いソファはその向こうに広がる海を見下ろすことができるよう配置されている。テーブルにはまだ開けていないボトルとグラスが置かれていた。
 晴菜が思わず吐息を漏らすと、男がにやりと笑った気配が伝わってくる。

 ――ここ……スイート?

 リビング然とした空間の左右には、キッチンとベッドルームがあった。明らかに通常の客室とは違う造りに、大きすぎるベッドフレーム。この客室が最も高いランクのものであることは、晴菜にもすぐにわかった。
 男はバッグをソファの上に置き、上着とネクタイをソファの背にかける。その一連の動きを、晴菜はただ眺めていた。

「……ずいぶんと贅沢ですね」
 
 掠れた声で言うと、彼は小さく笑った。
 
「もう一週間も出張続きなんだ。たまにはな」

 そう言って、彼は晴菜に向き直った。その時、彼の瞳の奥に宿る熱が、一瞬で部屋の空気を変えたように感じた。距離は相変わらず近い。
 わずかに上から見下ろす角度。逃げ道を塞ぎながらも、触れはしない。その加減が絶妙で、晴菜の喉は乾いた熱でひりついた。
 彼はするりと晴菜の腰を抱き寄せ、空いた手で晴菜のおとがいを掬い上げ、口づけた。手馴れたその動きに晴菜は抵抗することも出来ずそのまま受け入れてしまう。

「んっ……」

 不意の出来事に声が漏れた。自分でも驚くほど甘い声で、思わず瞼を閉じた。
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