君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 ディスプレイの黒い画面に、かすかに自分の顔が映った。目の下にできた薄い影。髪は乱れて、肌も少し荒れている。それもそうだろう、昨晩はメイクも落とさずに身体を重ね、先ほど浴びたシャワーでもメイクを落とすこともしなかったから。
 
 ――なにしてるんだろ、ほんとに。

 恋人に裏切られ、酒に逃げて、名前も知らない男に抱かれ。どんなに理由を並べても、結局は自分がそう選んだだけだ。恥ずかしさよりも、惨めさの方が勝っていた。
 構内に流れるアナウンスの声が遠くに感じる。足元の黄色いタイルが少し霞んで見えた。
 反対側のホームに電車が滑り込んでくる。ざあっと大きく風が吹き付けて、晴菜は思わず髪を押さえた。バッグの中からイヤホンを探そうと手を入れた瞬間、手元のスマホが震えた。
 視線を落とした先のディスプレイには『福寿酒店』の文字が表示されていた。こんな朝から、なんの用事だろうか。
 晴菜は着信画面をぼうっと見つめ、ゆっくりとスワイプをした。

『晴菜ちゃん? 朝からごめんなぁ』
「ううん、大丈夫。どうしたの?」
『この前のお見合いの話な。お相手さんがね、ぜひ会いたいと言うてはるのよ。晴菜ちゃん、お付き合いしてる人おるって聞いてたし、断ったほうがええんかなと思うて』
「……付き合ってたけど、もう終わったの」

 自分でも驚くほど、あっさりと言葉が出た。胸が痛むかと思いきや、考えていたよりもそこまでの感情の揺れは起きなかった。
 電話の向こうで、叔母の息を呑む音がする。
 
『あら……そうやったん。ごめんなぁ、余計なこと言うてしもて』
「ううん、気にしないで。むしろ、ちょうどよかったかも」
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