君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
 康介と出会ったのは、三年前の音楽フェスだった。大学時代の友人に誘われて行った会場で、彼のバンドのパフォーマンスに目を奪われた。ステージ上の康介は、ギターを弾きながら歌う姿がまるで光を放つようだった。
 その音楽フェスの後、偶然にも康介が勤め先のBARギャレットに来店。音楽を語る彼の情熱は、晴菜の退屈な世界に鮮やかな色を添えた。何度か言葉を交わすうちに康介に口説かれ、晴菜はそれを了承した。
 交際が始まってからも、彼の夢を追いかける姿勢に心を動かされた。だが、時間が経つにつれ、その情熱が晴菜を置き去りにする理由に変わっていった。康介の生活は不規則で、約束はしばしば彼の『音楽の都合』で反故にされた。金銭感覚も合わず、散財する彼が『今は夢に投資する時期』と笑いながら言うたび、晴菜の胸には小さな違和感が積み重なった。
 カラン、と、カップの中の氷が音を立てる。じわじわと薄まっていくカフェラテをぼんやりと見つめていると、スマホが小さく震えた。
 画面には――『福寿(ふくじゅ)酒屋』の文字。電話に出ると、声の主は京都に住む叔母の華子(はなこ)だった。

「叔母さん、こんにちは。どうしたの?」
『いきなりごめんなぁ』

 華子の声は、いつもより少し弾んでいた。何かを勧められる予感が、した。

『実はな、お見合いの話があるんよ。興味あらへん?』

 晴菜の父方の祖母は、京都の呉服屋の娘だった。その呉服屋は三兄妹の長男である父の兄が継ぎ、真ん中の華子は老舗の酒屋に嫁いで、晴菜の父は上京して商社勤めをしている。祖母が一昨年亡くなった後も、華子は何かと晴菜を気にかけ、こうやって時折連絡をくれていた。

「お見合い?」
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