君を酔わせるまで離さない〜ワンナイトのはずが絶倫すぎる俺様副社長に本気で囲われています〜
『そうそう。うちが取引してる老舗の酒蔵さんのね、二番目の息子さんやねん。今は副社長してはるのよ。真面目にお家の仕事、よう手伝うてはるん。イケメンやのにええ子やで~。確か今年で二十九歳やったかな。晴菜ちゃんのひとつ上やわ』

 電話口の華子が力説する声が耳朶を打つ。目を輝かせながら店頭の受話器を耳に当てている叔母の姿が容易に想像でき、晴菜は心の中で苦笑した。

「ありがとう、叔母さん。でも、私……今、お付き合いしてる人がいるから」

 そう口にしながら、胸の奥がざらつく感触があった。康介との未来を思い描くたびに、いつも何か引っかかるものがあるからだ。金銭感覚も、時間の使い方も、価値観の細かなずれもある。彼の夢を追いかける姿は眩しかったけれど、晴菜はいつも影に立たされているような気がしていた。
 それに、一年前に康介と引き合わせた晴菜の両親は、康介のことを「夢追い人で頼りない」と遠回しに評していた。晴菜自身も、彼とのすれ違いが積み重なるたび、自分のこれまでの生き方と、彼の奔放な生き方の間に溝があることを薄々感じていた。

『そうなん?』
「うん。だから、悪いけど……」
『ほな、写真だけでも見てみぃひん? イケメンやし、目の保養にはなるで~』

 断る晴菜に華子は食い下がってくる。どうやら諦めが悪いらしい。晴菜は軽くため息をつくと、少し間を置いて答えた。

「……じゃあ……写真だけ、ね」
『ほんまに? ほなら、郵便で釣書ごと送るさかい。今スマホ教室に通っててな、写真の送り方習ってるねん。あん子の写真、スマホのカメラで撮ってそれでも送るわ。あっ、チャレンジしてみるけどな、もしできひんかったらごめんなぁ』

 華子の声が嬉しそうに弾む。晴菜は電話を切り、スマホを目の前のテーブルに放り出した。

 ――今の私が……二十代前半だったら。
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